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東京高等裁判所 昭和39年(ラ)295号 決定

抗告人 大山次男(仮名)

主文

本件抗告を却下する。

理由

記録によれば、抗告人は大山友子を相手方として東京家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を提起し、昭和三八年一一月一五日午後一時、昭和三九年二月二二日午前一〇時及び昭和三九年五月一四日午前一〇時に期日が指定されたが、いずれも当事者双方とも不出頭のため、昭和三九年五月一四日の期日に調停委員会において、調停の成立する見込みがないとの理由によつて調停打切の処置がなされたことが認められる。

家事調停事件において、調停の打切は調停委員会がその自由な意見をもつて、当事者間に合意の成立する見込みがないと判断したときに行なわれる措置であつて、この事件終了の措置に対しては当事者に不服申立を許した規定は見当らず、また家事調停の性質からしても不服申立をすることはできないと解するを相当とする。けだし、一般に、合意が成立する見込のないことによる調停打切の措置は調停を為さないことによつて調停手続を終了せしめるだけであり、家事審判法第九条一項乙類に規定する事件又は訴訟の対象となる得る事件についての調停を打切る場合にも事件の実体については何等の裁判をしていないのであり(家事審判法二六条参照)、従つて之については何等の拘束力をも生ずる余地はないのであるから、当事者は調停の見込みがあると考える場合には新に調停を申立てることは何等妨げられないからである。

よつて本件抗告は不適法というべきであるから、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 鈴木忠一 判事 谷口茂栄 判事 加藤隆司)

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